マルモ・ササキという女流チェリストの演奏を聴きました。
聴いたのは、都内の某銀行ロビーでのリサイタルで、曲目はバッハの無伴奏チェロ組曲第三番とオペラからの名旋律などです。
バッハは、これまで聴いたことのないほどの歌心にあふれた演奏でした。特に後半のサラバンドは遅めのテンポでゆったりと歌い、有名なブーレでは思い切った装飾音を取り入れるなどユニークな解釈でした。
そしてオペラからはロッシーニ「フィガロ(セビリャの理髪師)」のアレンジ、プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」から「私のお父さん」など。平井康三郎「さくらさくら」で締めました。いずれも確かな技術に支えられてはいますが、それよりも「歌」を前面に出した大胆かつ見事な演奏です。その「歌」も、か細い楚々とした歌い口ではなく、強靭なカンタービレによる朗々たる歌いっぷりです。
この人は、イタリアで育ち、ドイツの歌劇場(ベルリン・シュターツカペレ)などで演奏経験を積んできました。そうした欧州での生活や演奏活動が、演奏にも色濃く反映されていると感じました。日本人のチェリストでも最近は優秀な若手や優れた女流が輩出されていますが、日本で育ち、日本でチェロを勉強してきた人たちの、ある意味で優等生的な演奏とは明らかに一線を画すものがササキの演奏にはあります。